クリエイターの声

厳しい映像業界。好奇心を持って飛び込める人が向いている。

映像ディレクター

植田 章裕

2008-12-01取材

第一回目は、テレビの「映像ディレクター」。もともと映画への興味から映像業界に入り、現在は(株)TBSビジョンにて『王様のデザート』や数々の企業プロモーション番組を手がける植田 章裕氏。ADからスタート後、今や映像ディレクターとして映像業界の最先端にいる植田氏に業界のあれこれや、映像への情熱をうかがった。

映像ディレクターという仕事

ー植田さんは、現在テレビの最前線でご活躍されていらっしゃいますね。

TBSにて毎週土曜日に放映される『王様のブランチ』の後の『王様のデザート』という1分程のレギュラー番組の映像ディレクターをしています。eコマーシャルとかパブリシティ枠といって、新商品やアミューズメントスポットを紹介するCM番組です。その他にも、TBSだけのローカルCMなど、単発のCM番組も作っています。

ー「映像ディレクター」は、実際にどんなことをするんですか?

ディレクターは、全ての作業に目を通さなければいけません。まず、TBSの営業局から案件が来るのですが、その案件について広告代理店とクライアントと打ち合わせをし、台本やスケジュールも組んでロケに行きます。その後の編集作業では、映像のエフェクトやテロップの種類まで考えますし、声音などの音の調整とチェックもします。『王様のデザート』はレギュラーで何年もやっているので、案件が来てから約2週間くらいで作ります。ロケは、スタッフもタレントも大人数で行くので一番楽しいですよ。今までで一番思い出に残っているのは、富士急ハイランド。ジェットコースターとか、みんなが楽しんで乗ってました。僕は下から手を振るのが精一杯で(笑)。

ーTBSビジョンでディレクターってすごい。狭き門な気がしますが・・・

元々は映画監督になりたくて、専門学校で舞台や演技を勉強していたんです。卒業後は、フリーランスで映画制作の仕事に就きました。映画制作は、横の繋がりができたりして、とても刺激的な毎日でした。ただ、フリーランスという立場で仕事をしていると、ひと作品完成後の次の仕事を自分で探さないといけないんです。ある時、この働き方は長くは続かないと思い、次へのステップアップを考え始めました。それで、求人誌「フロムエー」を買い続けていた時に、クリエイティブ業界専門の派遣会社、フェローズを見つけたんです。

ーフリーランスって自由なようで、社会的な保障の面では確かに不安ですよね。現在のTBSビジョンでのお仕事も、その派遣会社の紹介ですか?

そうですね。登録後、最初に打診されたのはNHKでした。ただ、フェローズ社長の野儀さんと先方に仕事の内容や条件など聞きに行ってみると、自分の希望とは違うものだったんです。その時に、野儀さんに、「自分のやりたいことじゃないんだったら断ってくれていいですよ。」って言われました。会社としては、登録者がそこで働いてくれた方がよかったんだと思いますが、野儀さんは僕のやりたいことを汲み取ってくれていたんです。この会社は信頼できると思いました。その後に来た話が、今のTBSビジョンでした。

派遣だからこその出会いや繋がり

ー世の中では「派遣」というスタイルはネガティブなイメージに取られることもありますが、派遣ならではの魅力はなんでしょうか。

保険などの社会的な保障があることも一つ挙げられると思います。それから、派遣会社は、個人だと持ち得ないコネクションを持ってるのも強みです。この業界は、コネクションがあった方が入りやすいと思いますし。最近、僕の下にフェローズから18歳の後輩が入ってきました。彼は、映像関係の学校卒業ではないので、コネクションとか何もない状況でフェローズに登録して入ってきました。全くの初心者でも現場ではしっかり教えますから心配ありません。若いうちは派遣会社に所属して、経験を積んで、フリーを目指すならそれからの方がいいと思います。

ー同じ派遣会社の仲間で、そうやってサポートし合えるのは心強い。

情報共有が出来たり、教え合えたり、サポートし合える仲間がいるのは心強いと思います。それに、フェローズは新年会とかイベントがあって、登録者が一斉に集まる機会があるんです。映像や出版などクリエイティブ業界に派遣で働く様々な業界の人たちが集まるので、情報交換にもなりますし、そこで新しい仕事が生まれたりすることもあります。空間デザイナーの人や出版の人と「一緒に何かやろう」って話になったり。先輩後輩での仕事面でのアドバイスもできたり、業種を越えて横の繋がりや広がりができるのは、派遣ならではの魅力ですね。

ー映像の仕事は、昔から思い描いていた業界なのですね。

映像制作はハードな仕事ですが、僕には他に出来ることが何もないんです(笑)。ただ、やっぱり好きじゃないと続きませんよね。「いつかディレクターやプロデューサーになりたい」という夢がある人は強いと思います。僕も、「いつか映画が撮りたい」っていう夢がありましたから。

ーなぜ、今は映画でなくてテレビ制作をされているんですか?

映画とテレビは、スタッフの関わり方にしても予算編成にしても全く違います。テレビ業界に入った最初の頃は、その違いに戸惑いました。ただ、映画とは違って、アイデア勝負なところにテレビならではの面白さを感じています。 映画はあらかじめ予算が決まっていて、予算が少なければ何かを妥協することもあります。一方、テレビの場合は短期間でしかも予算を最小限にして、いかに面白いことが企画できるかを考えます。いかにお金をかけないでアイデアで勝負するか。何よりアイデア勝負なところは、テレビ制作の醍醐味だと思いますね。いま、3、4本の企画を出しています。通ればいいのですが・・・。

好きなことにバカになれ

ーなるほど。映画への夢のステップでもあるんですね。とはいえ、ディレクターってなかなかなれるものではないですよね。

まずは、飛び込んで、やり続ければいいんです。面白いアイデアのために好奇心を持ってよく遊び、吸収することも必要ですね。昔、北野武さんが、「学校で映画を学んでいる人よりも、全く違うフィールドにいる人の方が面白い映画を作る」って言っていました。確かにそうだと思います。 あとは根性で続けることです。色んなことを覚えて、学習して仕事をこなして、そういったひとつひとつが出来て継続していけば、必ずステップアップします。

ーディレクターという立場ならではの悩みってありますか?

今、レギュラー番組を持っていますが、ずっと続くわけではないので、常に新しい番組や企画を考えないといけないと思っています。レギュラー番組を一度持ったからには、次もレギュラー取らないと、っていうプライドもありますし(笑)。レギュラー番組に関しては、マンネリ化しないようにテロップやエフェクトを変えたり、視聴者を常に飽きさせないように気を使います。

ー日々のアイデアが大切なんですね。最後に、映像の仕事に興味のある人たちにメッセージをお願いします。

何か言えるとすれば、几帳面に細々考えるよりも、ポジティブな方が向いていると思いますね。アホな方がいいんです(笑)。好きなことのために、バカになれ。っていうか。仕事はもちろん真剣にやるときはやりますが、好奇心を持って飛び込める人が向いているのではないでしょうか。

ーありがとうございました!今後の植田さんのご活躍を楽しみにしています。

植田 章裕

1976年生まれ。
専門学校東京アナウンス学院卒業後、「ニューシネマワークショップ」で映画を学んだ後にフリーランスで映画制作に携わる。2003年、FELLOWS(フェローズ)より、株式会社TBSビジョンにAD・制作進行として勤務。現在は、ディレクターとなり、レギュラーで『王様のブランチ』の枠内にある『王様のデザート』を受け持つ。その他、企業プロモーション番組も数多く制作。