二以上事業所勤務とは?
2023.10.01
労働者が、副業先など複数の事業所で勤務する場合、いずれの会社でも社会保険の加入要件を満たした際は、それぞれの会社で社会保険の資格を取得することになります。
この状態を「二以上事業所勤務」と呼び、健康保険・厚生年金の特別な手続きが必要になります。
二以上事業所勤務の時に必要な対応
二以上事業所勤務の該当者である労働者は、勤務する複数の事業所のうち、主たる事業所がどれなのかをすみやかに選択し、届出を行う必要があります。
例)労働者がA社とB社に就業しており、A社を選択事業所として届出を行った場合
以降はA社を管轄する年金事務所・保険者(協会けんぽや健康保険組合)が手続きに関する主な事務を行うことになります。B社は非選択事業所となります。
健康保険証はA社のもののみが発行され、使用できます。
二以上事業所勤務の状態では、加入要件を満たしている事業所のそれぞれで保険料徴収が発生します。
保険料額については、まず、それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定します。その上で、決定した標準報酬月額による保険料額をそれぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分されることになります。
【選択事務所:A社】
- ● 健康保険・厚生年金の手続きを行う
- →健康保険証はA社から発行される
- ● B社と按分した保険料が発生する
【非選択事務所:B社】
- ● A社と按分した保険料が発生する
二以上事業所勤務の手続きの流れ
● (1)該当の労働者に、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」に提出していただく
該当者である被保険者は、事実発生後10日以内に選択する事業所の所在地を管轄する年金事務所へ届出を行わなければなりません。
※フェローズでは社労士経由にて年金機構に届出が提出されるため、派遣スタッフの方に下記の回答をしていただいています。
【確認事項】
①現在勤務している事業所名称・所在地
②現在加入している社会保険の名称および事業所整理記号
③現在加入している社会保険の被保険者番号および資格取得年月日
④現在加入している社会保険(健康保険・厚生年金保険)の報酬月額
⑤現在の通貨による報酬額と現物による報酬額
⑥直近の報酬額(支給額・控除額・差額合計)
⑦選択事業所(保険証はどの就業先のものを使うか)
● (2)年金機構から決定通知書が届く
決定通知書には、按分前の合計金額や決定月等の詳細が記載されています。
● (3)決定通知書の金額を元に労働者から適切な保険料を徴収する
決定通知書が届いたら、速やかに適切な保険料を労働者から徴収できるよう手配します。
既に暫定で算出した保険料を給与から算出している場合は、差額を返金・徴収することになります。
まとめ
二以上事業所勤務の該当者は勤務する複数の事業所のうち主たる事業所がどれなのかを選択し、届出を行う必要があります。また勤務先の事業所も二以上事業所勤務に対する対応を早急に行わなければなりません。
現在、短時間労働者の社会保険適用条件が順次拡大されています。副業を行う人も増加傾向にあるため、今後さらに二以上事業所勤務の労働者が増えることが予想されます。労働者への周知や各種手続き方法等についてしっかり確認し、理解しておきましょう。
よくある質問
Q二以上事業所勤務で他に注意すべきことは?
雇用保険の加入や扶養控除等申告書の提出先について注意が必要です。
雇用保険の加入や扶養控除等申告書の提出先については、選択事業所かどうかに関わらず、主たる給与の事業所のみとなりますので注意してください。
また、二以上事業所勤務をしている労働者は、別の事業所で勤務をしている分だけ週の労働時間が長くなるため、勤怠実績以上の残業時間が発生している可能性があります。保険の手続きだけでなく、就業時間の管理についても事前にしっかり確認をとっておくことが重要です。
Q二以上事業所勤務の手続きが行われない場合はどうなる?
それぞれの就業先で保険料が本来の金額ではないため、労働者はもちろん会社側にも余分な負担がかかります。
会社は、労働者の就業状況について把握しておき、複数の事業所に勤める労働者には手続きをするよう指導が必要です。労働者からの保険料徴収に誤りがないように気を付けましょう。
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