第1回:アクセス解析の目的は?Web担当者が知っておきたい効果的なサイト運営方法
こんにちは、Webプロデューサーの高橋洋平です。
前回のシリーズ「Webサイトはどう見られてる?閲覧状況を見える化するGoogle Analytics 4(GA4)の基本を覚えよう!」では、GA4の概要から基本的な操作方法をご紹介しました。
続編にあたる今回は、「すぐに使える!閲覧状況から改善策を探るGoogleアナリティクス4実践活用法」と題し、アクセス状況をもとに「どのようにWebサイトを改善するのか?」にフォーカスした講座です。
GA4は操作方法を覚えるだけでは意味がありません。
アクセス解析本来の目的は、数値をもとにWebサイトの閲覧状況を正確に把握し、Webサイトの改善を行い、目標(コンバージョン)の達成へと導いていくこと。
続編にあたる今回は、読者の皆さんが日常業務ですぐに活用できる内容で構成していきます。
<目次>
■■Webサイトで継続的にコンバージョンを上げていくには■■
Webサイトで継続的にコンバージョンを上げていくには、どうしたら良いのでしょうか?
現在のWebサイトが古かったり、問題点が多い場合、リニューアルをするだけでコンバージョンが上がるケースもあります。
しかし、「サイトをリニューアルしておしまい」では、継続的な成果を得ることは難しくなっていきます。
Webサイトの新規立ち上げや既存Webサイトのリニューアルはゴールではなく、スタートに過ぎないのです。
24時間365日公開されるWebサイト。
季節や時間帯の違い、閲覧シーンなど、様々な要因によって、ユーザのニーズは移り変わります。
状況の変化にともない、最初は成果を出しているWebサイトでも、課題や問題点が発生している可能性もあります。
成果を継続して上げていくためには、しっかりと目的意識を持ってWebサイトを運営し、課題があれば改善していくことが大切です。
以下に、目的意識を持ってWebサイトを運営するための5つのヒントを記載します。
■■効果的なWebサイト運営・5つのヒント■■
1:■Web担当者の3つの役割■
2:■Webサイトのカテゴリごとに目的を明確にする■
3:■目標(KGIとKPI)はどう設定する?■
4:■仮説を立てる■
5:■解析データから課題を見つけ対応策を考える■
■Web担当者の3つの役割■
Web担当者が担う業務は多岐にわたります。
所属している部署やチームによっても異なりますが、以下の3つが基本的な役割です。
ご自身の業務と照らし合わせて必要だけど実行できていない業務はありますか?
▼Webサイトの運用・保守
・Webサイトの更新(社内から指示を受け、更新作業を行う。外部委託している場合は更新依頼)
・ドメインやサーバ、SSLの契約管理
▼自社や商品・サービスの認知拡大
・SNS運用、ブログなどの情報発信
・LINE、メールマガジン配信などの情報発信
・Web広告を活用した集客施策(外部委託している場合は出稿依頼)
・SEO対策
▼分析・改善
・気づきや仮説の立案
・アクセス解析
・課題抽出、改善施策検討
・Webサイトの改善
・状況によってはWebサイトのリニューアル
今回の講座では、この中から「アクセス解析」「課題抽出、改善施策検討」「Webサイトの改善」についてフォーカスして解説します。
■Webサイトのカテゴリごとに目的を明確にする■
みなさんが管理するWebサイトの目的はなんでしょう?
「売り上げを増やしたい」「自社の認知度をアップしたい」「効果的な採用につなげたい」・・など、Webサイト運営には何かしらの目的があります。
以下に一般的なWebサイトの種類とよくある目的をまとめます。
▼企業サイト(コーポレートサイト)
会社概要や企業理念など、自社の情報を紹介するWebサイトです。
主な商品やサービス、拠点情報、IR情報、採用情報などを掲載し、さまざまなステークホルダーに対して、会社を知ってもらうことが目的です。
▼ECサイト
商品を販売し直接的な売上を上げることを目的としたサイトです。
顧客情報を収集し、継続した販売につなげることを目的にしている場合もあります。
▼サービス紹介サイト
サービス内容や商品の解説を掲載し、資料請求やお問い合わせ、見積もり依頼、サービスへの申し込みにつなげることを目的にしたサイトです。
ユーザーに何かしらのアクションを促し、見込み客の情報収集を行うことも目的となります。
▼ブランディングサイト
商品やサービス、社会的な取り組みなどを伝え、ユーザーからの好感度を高めることを目的としたサイトです。
商品やサービスに限らず、会社自体の印象を向上させる目的にも使われます。
▼採用サイト
求職者に向けて会社のことをより深く知ってもらいたい場合、企業サイトとは別に採用サイトを公開することがあります。
通常は企業サイト内に掲載されることもありますが、企業サイトでは顧客向けのデザインやサイト構成が重要視されてしまう傾向があります。
採用サイトは求職者(主に学生)に特化した内容で構成し、会社への興味を惹きつけ応募につなげることを目指します。
▼メディアサイト
記事などの読み物を掲載し、より深い情報を発信するサイトです。
記事閲覧時に広告を掲載して広告収入を得る場合や、タイアップ記事で収益を得る場合、記事の内容を通して運営企業のイメージを向上させるブランディングをしたい場合など、さまざまな目的が考えられます。
日々Webサイトの運営を続けていると、日常業務に追われたり、サイトを運営すること自体が目的になってしまったりすることがあります。
みなさんが運営するサイトは、本来の目的が形骸化していないでしょうか?
いま一度確認してみましょう。
■目標(KGIとKPI)はどう設定する?■
せっかくGA4でデータを収集していても、目標値がわからなければ、多いのか少ないのかも判断できません。
データを適切に判断するためにも、目標(KGIとKPI)を設定しましょう。
▼KGIを設定する
KGI(ケージーアイ)とは、「Key Goal Indicator(キーゴールインジケーター)」の略称で、「重要目標達成指標」とも呼ばれています。
「売上高」「利益率」「成約件数」など、客観的に数値化できるものが該当します。
KGIは、指標、値、期間の3つの要素から設定していきます。
指標
ECサイトであれば、売り上げ、商品やサービスの紹介サイトであれば、資料請求やお問い合わせの数、会員向けのサイトであれば会員の獲得等が指標になります。
注意点としては、資料請求やお問い合わせ、会員の獲得も最終的には商品の販売を行うということであれば、指標は売り上げにする方が適切です。
値
上記の指標に対する数値です。売り上げであれば×万円等の具体的な金額になります。
ウェブサイト以外の集客や販売チャネルがある場合は、全体の売り上げ目標からウェブ販売の割合の目標値を算出すると良いでしょう。
仮に全体の目標が1000万円で、ウェブサイトが貢献すべき目標割合が45%だとすると、450万円になります。
期間
設定したゴールをいつまでに達成するのか? 目標達成までの期間も設定しましょう。
一般的には月単位で設定されますが、週単位や日単位で設定する場合もあります。
Webサイトが置かれた状況や、改善のスピード感、季節性など、さまざまな要因によって期間設定は異なってきます。
全体を鑑みて細かく期間設定することは、最初は難易度が高いかもしれません。
はじめは月単位の設定が実行しやすく、オススメです。
さらに月次で報告会を行い、状況報告や改善点などを共有するとベストです。
四半期・半期・一年など短期・長期スパンで振り返りの場を設けると、より業務が進めやすくなるでしょう。
▼KPIを設計する
KPI(Key Performance Indicator)とは、特定の部分を改善して、目標達成を行うための指標です。
ゴール(KGI)を設定すると、逆算して月にいくらの売り上げがあれば良いのかがわかります。
Webサイトの状況とゴール設定によって、KPIを設定してみましょう。
【目標より売り上げが多い場合】
目標を達成しているので問題ありませんが、サイト改善によってさらなる売り上げを達成できる(ゴールが低く設定されている)可能性があります。
【売り上げが足りていない場合】
売り上げが足りていない場合はどうしたら良いでしょうか?
例えば月450万円の売り上げ目標に対して、売り上げが300万円だと、100万円不足しています。
不足している分の売り上げを上げるには何をすれば良いのか?
300万円を1.5倍すると、450万円になりますね。
売り上げを取り巻く項目を1.5倍にする方法を考えてみましょう。
ウェブサイトへの訪問者を1.5倍にする、購入件数を1.5倍にする、購入単価を1.5倍にする・・などが考えられます。
この考え方をもとにKPIを設定すると下記のようになります。
訪問者:10,000人を1.5倍(KPI:15,000人)
購入件数:100件を1.5倍(KPI:150件)
購入単価:30,000円を1.5倍(KPI:45,000円)
KPIの設定をもとに具体的な対策を考えていくことになります。
KPIの設定はどれか1つが正解ということではなく、どの方法でも成果を出せる可能性があります。
例として不足分の割合から算出しましたが、必ずうまくいくとは限りません。
リスクを考慮し、割合を上げる、KPIを増やすなどの施策も有効でしょう。
■仮説を立てる■
闇雲に解析データを眺めても問題点や改善点は発見しにくいものです。
まずは、実際にWebサイトを使ってみて課題や気づきを得て、何が問題なのか仮説を立ててみましょう。
仮説を立てる際には、ユーザーになりきってサイトを利用してみることが重要です。(まるで、初めて閲覧するような気持ちで!)実際にサイトを操作している中で、データでは気づけない課題を発見することがあります。
後から解析データで検証を行うことで、ほかのユーザーも同じ課題を抱えていることがわかるかもしれません。
仮説立てや課題発見が難しい場合は、Web担当者以外で想定しているユーザーに近い人にサイトを利用してもらう方法も考えられます。
※Web担当部署の人だと、そのサイトついて詳しいため、ユーザーに近い目線での気づきが得られない可能性が考えられます。先入観のない人に依頼することをおすすめします。
全体に関わる事柄や、各ページごとの気づきや仮説などを、スプレッドシートやエクセルなどにメモしてもらいます。
■解析データから課題を見つけ対応策を考える■
気づきや仮説の上がった箇所に対して解析データをもとに検証し、課題を見つけ対応策を検討します。
解析データから課題を発見するには、基本となるデータと別のデータを比較することが重要です。
例えば表示回数(ページビュー)が10,000PVだとします。
一見大きな数値に見えますが、比較対象がなければ、本当に多いのか少ないのか?効果が出ているのか?改善が必要なのか?などを判断する事は難しいでしょう。
サイト全体の平均値と比較や、ページA(1000PV)とページB(500PV)の差を比較したり、今月と先月の比較、今月と昨年同月など、比較対象があれば数値に対しての判断が可能になります。
ひとつの数値から判断するのではなく、指標となる項目や数値、期間など、比較対象を設定し解析データから課題を見つけていきましょう。
■■Webサイトを分析→改善の業務フロー■■
一般的な業務フローのイメージを図にしました。
Webサイト閲覧と解析データ確認を一緒に実施した方がやりやすいという方もいるかもしれませんし、業種や業務内容によっても異なるかと思います。
明確な正解はありませんので、ご自身の業務や仕事のスタイルに当てはめつつ参考になさってください。
本日はここまでです。
次回から本題に入ります。
次回は「もっとじっくり見てほしい!Webサイトの直帰対策その1」として、GA4での問題点の見つけ方や考えられる原因について解説します。
お疲れ様でした。