今「あなたこういう業種の人ですよ」って言われるのも、結構くすぐったいぐらいで、自分でそういうクリエイティブな仕事をしてるっていう意識もあんまりないですね。
人に言われて初めてなんぼなんじゃないか。監督っていう職業も人に言われない限り絶対監督じゃない。誰かに監督って言われて「あ、そうか。俺、監督か」みたいな。現場では名前で呼ばれなくて、「職業名」で呼ばれるわけです。
それと同じように「クリエイター」っていうのも、こういう言い方すると多くの人を敵に回すかもしれないけど、自分で言っちゃダメだと思うんですよ。あくまでも人に言われるようにならなきゃいけないんじゃないかな。
それはどういうことかっていうと、「俺がこれを作ったから、これを見ろ」とか、「これを食え」とか、「これを読め」とかじゃ、ダメな気がするわけですよ。「読んでみたい」って思わせなきゃいけない。これは「奉仕」という「尽くす精神」です。サービス業ですよ。
大きな勘違いをしてはいけないのは、クリエイターっていうのはお客さんあってのものです。お客さんが喜ばなかったら、あなたはいつまで経っても「壊れたラジオ」と同じなんです。「誰に向かって、誰を喜ばせようとしたいか」ということを絶えず考え、絶えず形にしていかなきゃダメなんじゃないかなと思う。
本当に自分にとってこんなに楽しいことはなかった。
うまくいかないこともあるし、もちろん苦しいことだらけだけど、うまくいったときの快感というか快楽というか、そういった充実感も含めて、もう他では変えられない喜びなんです。それを1回味わえば、またもう一回やりたくなるんじゃないかと。
そこまでいくのは多分大変だろうけど、頑張ってほしいなと思うんですね。